そば屋はなぜ領収書を出したがらないの?
明けましておめでとうございます。平成23年の第1弾は、年越し蕎麦と税金の話題から始めます。
(年越しそば)
皆様、年末には「年越し蕎麦」を食べられましたでしょうか。実は「そばのように細く長く生きたい」という願いを込めて新年を迎える前に「年越し蕎麦」を食べる習慣となったそうです。
一方、讃岐うどんが有名な香川県では、数年前から、「年明けうどん」なるものを提唱、推進しているそうです。富永家では、年末には、うどんとそばの両方を食べます。「来年も運(うどん)が傍(そば)にありますそうに!」との願いを込めてです。
(そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか)
さて、「そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか」をご存知でしょうか。確かに、そば屋にはこちらから請求しない限り、領収書を出さないところが多い気がしますね。
実は脱税をするために領収書を出したがらない可能性が高いそうです。
脱税をするには、経費を水増しするか、売上を隠すか 2 種類しかありません。
このうち、経費を水増しする脱税方法は、実際には無い支出をあたかも有るように見せかけなくてはならないので、多くの証拠を作る必要が生じるから、脱税が発覚しやすいのです。
それに対して、売上を隠すのであれば、実際には有るものをあたかも無かったように見せかけるだけなので、証拠を消してしまうだけで良いので、脱税がしやすいのです。売上がある証拠として基本的なものは「領収書」です。
ですから、「領収書」を発行しなければ、売上をごまかしやすいわけです。
(領収書のウソ・ホント)
「領収書がないと絶対に経費と認められない」というのはウソです。
税法上、決算に関係する証票類を残しておかねばならないという義務はありますが、それは「必ず領収書を取っておかなくてはならない」という意味ではありません。「使った日時」「使った場所」「使った目的」「金額」が分かれば、領収書がなくても、経費として認められます。
「宛名が「上」になっている領収書はダメ」というのもウソです。税務申告上は、宛名が「上」の領収書は認められないという規定はありません。ただし、会社によっては、立替金の精算に使う領収書は「上」ではダメという社内規定はありますが、税法とは関係ありません。
(申告納税制の意味)
我が国においては、申告納税制度が取られております。納税者が申告した税額を否認するには、否認するための根拠が必要であり、その根拠の確実さ(正確さ)は税務署が立証しなければなりません。
「このゴルフプレー代が事業関連目的での支出だと明示できないなら、経費は認めません」と言ってくる税務署員がいますが、これは明らかな間違いです。税務署員の方で、「このゴルフプレー代が事業関連目的での支出ではない」と証明できない限り、経費としては認めざるを得ないのです。
(修正申告か更正か)
申告書が正しいかどうかハッキリしない場合、税務署は申告書を納税者側が自ら修正すること(修正申告)を強く勧めますが、税務署の指導に納得がいかなければ、修正申告をする必要はありません。
納税者側が修正申告をしないと、税務署側で「更正処分」とするか、申告書を認めるしかないのです。ただし、更正となると税務署側に立証責任があります。(青色申告者の)更正処分となると、更正理由を付記して納税者に通知しなければならないし、その更正理由は裏付け調査に基づく裁判に耐え得る綿密な資料が必要とされます。
更に、例年以上に更正処分が増加すれば、上司の指導管理能力が疑われ昇進に影響しかねないのです。したがって、それなりの覚悟がないと更正処分には踏み切れないのです。
つまり、我が国の納税制度は、理不尽な要求には応える必要のないという素晴らしい制度になっているのです。
今回のネタ元は、元国税調査官の大村大次郎氏の著書「そば屋はなぜ領収書を出したがらないの ?― 」です。大村氏の著書は、税務署の本音や裏側がわかって本当に面白くてためになりますよ。